歯を失ってしまったら 歯の基礎知識

歯が無くなったら、何故、治療が必要か?

 歯がなくなった時に最も損なわれる機能は下顎位(下顎の位置)の不安定性です。上下の歯がかみ合う時、下顎は歯列(歯並び)を仲介にして上顎に安定的に位置づけられます。これを、下顎の咬合(かみ合わせ)の支持といいますが、歯がなくなるとこの正常状態が崩壊し、かみ合わせが不安定になっていきます

 この治療の一番の目的は歯列のそれ以上の崩壊を防ぎ、残った歯と治療した歯とで永続的なかみ合わせを再構築する事です。その治療の選択肢として、ブリッジ部分入れ歯、そしてインプラントがあります。
 奥歯がなくなった場合はかみ合わせの力の主なものは垂直力で、前歯では下顎運動を誘導する側方力が主体となります。少しの歯(10本位迄)がなくなった時の「支持の基本」は残っている自分の歯になります。これが、100%達成できるか、70%程度かという事は、入れ歯の設計や、入れ歯かインプラントかの選択に大きく影響されます。

、 いずれにしても、(基本は支持の回復)であり、治療の方法は、それを如何にして、どの程度達成するかという事で変わる事になります。つまり、残っている自分の歯と協調して支持の回復をしてくれるのは、入れ歯かインプラントか?という選択になるということです。


歯がなくなった時の治療法の種類と特徴

  歯がなくなった時に人工的に治療する方法には、かむ力やその他の力を何が負担するかによって、歯根膜負担(ブリッジ)歯根膜・粘膜負担性(部分入れ歯)粘膜負担性(総入れ歯)歯槽骨負担性(インプラント)の大きく4種類に分けられます。

歯根膜負担性の治療法

歯がないところに隣接する複数の歯に、欠損部(歯が無い部分)を補う人工歯が固定性、半固定性、あるいは可徹性(取り外しする)に連結する方法。

特 徴
他の負担様式の治療法と比べて、咀嚼・発音・装着感・審美性において優れている。そのため、歯科医師が優先的に考える治療法と言えます。

欠 点
歯、そのものを削る量が多いこと。また修理が難しく、適応症としては少数歯欠損に限られることです。(2〜3本の歯を失った場合)

種 類

固定性ブリッジ 一般的に「ブリッジ」という時はこの固定性ブリッジをさしています。装置(被せる歯)はセメントで固定します。
半固定性ブリッジ 普通は固定性ブリッジを作るのですが、支える歯の負担能力に差がある時や、平行性がとれない時にこの方法を選びます。
可徹性ブリッジ 歯が抜けた部分の骨の吸収が大きくて床(入れ歯の赤い部分)を付けないと見た目によくない時、これを作ります。歯がない部分の両隣の歯を削って支台歯(ブリッジを支える)とするので、部分入れ歯とはちがいます。


粘膜負担性の治療法

部分入れ歯と総入れ歯のことであり、隣の歯を削る必要がなく、多数の歯がなくなったときに、選択される治療法です。

 年をとるにつれて、ブリッジ、部分入れ歯、総入れ歯をいれている割合がそれぞれ増えるのですが、特に、総入れ歯の割合が高くなっていきます。これは、部分入れ歯は総入れ歯までの移行的役割であり、歯がなくなることの進行を防ぐ治療として、役に立っていないからかももしれません
 何故なら、部分入れ歯の設計とかむ力の負担の問題がとても難しいからなのですが、現状として、部分入れ歯では残存歯の喪失(残っている歯がなくなる事)の進行が防げないことは事実であり、そこにインプラントの必要性があるといえるのかもしれません、つまり残っている自分の歯との協調という事です。


残りの歯をいかにして守るか!

 部分的に歯が残っている人に対する治療の目的は、「残りの歯や残っている顎の骨の状態、顎の関節などの周囲関連組織を保護すると同時に歯および周囲諸組織がなくなった事から起きる咀嚼・発音機能や審美性の低下を回復し、患者さんのQOL(生活の質)の回復を図る事」にあります。

    この目的のために重要なことは、
  1. 下顎位(下顎の位置)
  2. 咬合支持(残っている歯のかみ合わせの関係)
  3. 力の配分
  4. 残っている歯のコントロール
  5. 顎の骨のコントロール
  6. 円滑な総入れ歯への移行
  7. 戦略的な抜歯(歯を抜く事)とインプラント
  8. などを整理し、治療方針をたてる事です。

  ここで、特に7.戦略的抜歯について説明すると、患者さんには「残っている歯を抜きたくない」という願望があることが多いのですが、動揺(歯が動いている事)したり、咬合(かみ合わせ)に不安を感じながら使用しているような残存歯(残っている歯)をいつまでも保存しておくことは、本質的に患者さんの口腔機能(お口の働き)の助けにはならないうえに、周囲歯槽骨(顎の骨)の吸収や顎位(顎の位置)の不正を招く要因となるので、積極的な抜歯(歯を抜く事)が必要なことがある事を理解して頂きたいと思います。

 患者さん自身も意識を高め、我々治療スタッフと共にお口の中の管理をしていく事が、いつまでも健康な歯を残していく事への近道であると思います。